[2018.5.15]シリア和平ネットワークの代表が外務省中東一課を訪問し、最近のシリア情勢について協議しました。

5月15日、シリア支援団体サダーカ事務局長の森野謙さん、同アドボカシーグループの大竹菜緒さんと小泉尊聖さん、そして日本国際ボランティアセンター(JVC)の並木麻衣さん、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)の斎藤亮平さんがシリア和平ネットワーク代表として外務省中東一課の服部高士課長補佐と團杏奈事務官を訪問し、シリア問題について次のように意見交換を行いました。


先方の主な発言内容は;

1.国際シンポジウム

3月24日に明治学院大で開催されたシリア和平ネットワーク主催の「シリア人の声をつなぐ-危機発生から七年、私達に求められる役割」シンポジウムは外務省にはできない事であり、こうした市民社会のアプローチを外務省は歓迎します。

2.4月14日の米英仏軍によるシリアへの軍事攻撃について

先ずシリア和平ネットワークより、JVCが発出した声明について説明しました。本攻撃は安保理決議に拠らず、且つ自衛のための戦争とは云えない明らかな国際法違反であり、そうした軍事攻撃に理解を示す日本政府の方針は誤りである旨指摘しました。その上で化学兵器使用の有無の徹底した調査と政治的解決を日本外交は推進すべきである旨提言しました。

外務省側は、昨年の化学兵器使用疑惑時の米軍によるミサイル攻撃と同様に「米英仏3カ国の決意を支持する」と表現したのは、米英仏の軍事攻撃はシリア政府の化学兵器能力を減ずるためで、その攻撃による死者は発生しなかった、また日本政府は東グータでの化学兵器使用疑惑のみならず、これまでのシリア政府の化学兵器との関わり方を考慮して今回の判断に至ったと主張しました。東グータで化学兵器が実際に使われたかは、化学兵器禁止機関(OPCW)にて現在作業中で、調査結果が出るのに2~3週間はかかる見込みです。4月のカナダG7外相会議で河野外務大臣は、化学兵器使用者を特定できるメカニズムを早急に設立すべきと発言しました。

これに対し当ネットワークは、当時は化学兵器が使われたかどうか、また誰が使用したかが分からない状況であり、かつシリアがOPCWの調査を受け入れていたことを踏まえれば、軍事攻撃ではない他の方法もあり得た筈と指摘すると共に、日本政府のリードで化学兵器使用者の特定メカニズムが設立されることに期待を寄せました。

3.4月から5月にかけて発表された日本政府のシリア危機に関する支援

5月の中東訪問の際に安倍総理はヨルダンとレバノンのシリア難民支援のために世銀のグローバル譲許的資金ファシリティ(GCFF)に1000万ドルを拠出する旨発表しました。同時にヨルダン向けに400万ドルの無償資金が用意されることも明らかにされており、国連機関を通じた人道支援の用途で使われる予定です。これは4月にブリュッセルで開催されたシリア支援国会合で河野外相が発表した1400万ドルにのぼる「シリア危機の影響を受ける中東三か国に対する緊急無償資金協力」の一部です。


これら以外にも、シリア人の間の信頼醸成と和解を目指し外務省とシリア和平ネットワークが協働する可能性や学習会の実施、クルド人問題への取組の必要性などについても話し合いました。武力でシリアの平和は実現できない、対話や融和プロセスが不可欠であることも確認し合いました。


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