[2017.2.13]シンポジウム報告「シリア危機への実効的アプローチに向けて」

シリア和平ネットワークは2017年2月10~13日にかけて、共催団体の一つとして、シリア人有識者4名を日本へ招へいし、意見交換会及び公開シンポジウム「シリア危機への実効的アプローチに向けて」を明治学院大学(東京)にて開催しました。

本シンポジウムは、現下シリアの惨状の軽減に貢献するため日本のアカデミアとNGOがどうのような実効的アプローチが可能かを、シリアと日本の有識者の意見交換を通じて模索するものです。当日は、シリアで活動するシンクタンク・シリア政策調査センター(SCPR)からNabil Marzouk氏とZaki Mehchy氏の2名をシリア和平ネットワークが招へいし、現場の人道支援に携わるUNICEF中東・北アフリカ地域事務所の緊急事態専門官であるRawia Altaweel氏と、UNDPシリア事務所から障がい者リハビリ事業担当官であるLouay Fallouh氏を千葉大学拠点新学術領域研究「グローバル関係学」より日本へ招へいし、意見交換会及びシンポジウムをおこないました。また特別に、ダマスカスに拠点を持つシリア世論調査研究センター(SOCPS)とスカイプによるネット中継にも試みました。

(注:本企画は、政治的、営利的な意図を有さず、暴力や侵害行為の主体に対する非難や責任追及をするものではありません。)


ディスカッションでは、まず4人のシリア人招へい者から、それぞれの活動から見るシリアの実状について解説があり、スカイプ中継によりSOCPSの担当者からの声を聞き、その後全体での質疑応答がなされました。会場の明治学院大学国際会議場は100名超の参加者で満席となり、シリア情勢に対する関心の高さを感じられました。

以下は、今回の招へい者との議論において到達した結論が、シリア和平ネットワークのメンバーであるワールド・ビジョン・ジャパンの柴田氏から発表されました。


1. シリアにおける紛争の停止や平和構築のためには、他国で実施されたプログラムをそのまま適用するアプローチは機能しないということが再確認された。経済・社会・歴史など、その国の実態を深く知り、紛争の根本原因を突き詰めた上で、その国にあわせた固有のアプローチを模索することが必要であり、その際に重要となるのは、外部のアクターではなく、当該国のアクター、特にシリア社会を構成する市民の役割である。

2. シリア人が運営する研究機関(シンクタンク)が、シリア国内外の市民団体と日本の市民を結びつけるハブと成りえることがあきらかとなった。

3. シリア、レバノン、ヨルダンからのシリア人専門家が登壇した今回のシンポジウムには、事前から大きな反響があった。このことからシリア問題に関心を持ち何か行動できることはないかとの想いを持つ人々が日本に多くいることが改めて確認できた。

4. 現下のシリアの惨状に鑑みれば、実行可能な実効的アプローチについて、1回限りの対話で明快な道筋を見出すことは不可能である。私たち「シリア和平ネットワーク」は、賛同団体と連携し、シリアの和平実現を目指す日本の市民の代表として、シリア人を代表するシリア国内外の市民団体と連絡を取り、対話の機会をこれからも重ねていくことが必要であると再確認した。そして、対話の内容を広く発信し、シリア和平に取り組む日本国内外の政府および非政府機関と連帯していくことが必要である。

5. また、国会議員や外務省、JICAなどの政府機関と引き続きシリア和平実現に向けた官民連携の支援の在り方について意見交換を行い、具体的な戦略を構築することも必要である。

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