シリア和平ネットワークは2018年3月24日、明治学院大学国際平和研究所との共催のもとに「『シリア人の声をつなぐ』-危機発生から7年、私達に求められる役割-」を同大学白金校舎(東京)にて開催しました。
シリアの民主化を求める運動として始まったはずが、いつしか大国や周辺国のむき出しになった国益を巡る争いの場にかわってしまったシリアで置き去りにされている受苦者の声。私達はシリアの平和を願うものとして、現地から聞こえてくる切実な思いや叫びを国際社会に訴えるべく、本シンポジウムを企画しました。
2018年現在のシリア情勢について専門家から説明を伺った上で、紛争発生以前から東グータの人々と家族のような交流を続けてきた明治学院大卒業生に、包囲作戦による飢餓や空爆に苦しむ現地の友人の声を届けてもらいました。最後にシリア人としての思いをシリア政府軍と反政府武装勢力の衝突の前線に故郷をもつシリア人女性に語っていただきました。
東京外大の青山弘之教授は民主化や主権といったシリア内戦の争点が意味をなさなくなり、国益をむき出しにして争い合う諸外国の主戦場としてのシリアに陥っていることを浮き彫りにしました。トランプ政権の関与の低下。ロシア・トルコ・イラクの結託により決められてしまう「テロ」の定義。端的に云えばそれらの三カ国の意に沿う行為であれば「合法」。そうでなければ「テロ」となります。
明治学院大OBの中野愛さんは2008年にクリスチャンである自分を温かく受け入れてくれた東グータのアラブ人家族との交流の思い出を語りました。そして紛争発生後の現地から聞こえてくる助けを求める切実な声と、「私達はテロリストでないのに空爆されている」との訴え、そうした思いを多くの人々に伝えてほしいとの願いも。(シンポジウムの数日前から中野さんの東グータの友人の消息は不明だったのですが、中野さんの発表数時間後にその方から無事を知らせる連絡が届いたそうです。)
アルタウィル・ラウィアさんは戦争状態のシリアの日常を自らの経験をもとに語りました。生き延びたからと云って決して幸運とは言えない暮し。危険に晒される命。不自由な生活。愛する人々に会えない毎日。Compassion is universal human value(隣人の苦しみに思いを寄せる良心は誰にでもある。)ラウィアさんは次の四点を私達がすべきこととして挙げました:
・平和のために、誰もが取り残されないようにするために声をあげ続ける。
・教育へのサポート、人々が極端に走らないようにするための教育支援。
・紛争の影響を受けている家族や子ども達が生き延びるための支援。
・他の命を長らえるためのニーズと比べてコストが高い保健サービスへの支援。
その後全体での質疑応答がなされました。参加者からは「シリア人の本当の声が聞けた」、「シリア人が何を伝えてほしいかわかった」、「具体的に何ができるか考えさせられた」との感想を頂きました。シリア和平ネットワークはこれからも平和を求めるシリア人の声をつないでいくことで、非暴力によるシリアの平和に貢献していきたいと願っています。
登壇者の発表内容等を次の記事において紹介します。
・明治学院大OBの中野さんの発表内容
・ラウィアさんの発表要旨
ラウィアさん
中野愛さん
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