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シリアにおける武力攻撃を直ちに止めてください

2019年5月31日シリア和平ネットワーク私たちはシリアの紛争終結と和平実現に向けて、アドボカシー(政策提言)活動と確かな情報発信を実施していくために結成された NGO、アカデミア、市民のネットワークです。5月に入ってから、シリア北西部イドリブ県及びアレッポ県で戦闘が激化し、 民間人に死傷者や避難民が発生しています。国連人道問題調整事務所によれば、5月1日以降にシリア北西部で20万人以上が新たに避難民と化しており、現在までに少なくとも女性や子どもを含む205人の一般市民が死亡しています。同地域では 20万人に医療サービスを提供していた20の医療施設が攻撃を受け、17校の学校、避難民キャンプも攻撃の影響を受けています。私たちは、シリア、ロシア、トルコ、クルド民族主義勢力、反体制派等々、戦闘行為を行っている全ての主体に対し、直ちに軍事行動を停止するよう訴えます。また、日本政府および国際社会に対しては、シリアにおける即時停戦の実現に向け働きかけるよう訴えます。これ以上の犠牲者を出さず、シリアを人々が安心して暮らせる平和な国にすることは、国際社会の担う責任です。日本政府はこれまでにもシリア人道支援に資金を拠出しており、国連やNGOを通じてシリア内外で人々の支援を行うほか、JICAを通じ日本へシリア人留学生を受け入れています。人々が人間らしく暮らせる社会を目指した支援を行う国の一つとして、命や暮らしを奪う戦闘行為に対し停止を訴えかける義務があると、私たちは考えます。シリア危機は9年目となり、日本国内での報道は減っています。一方で今もなお、現地の人々の苦難は続いています。日本のメディア関係者の皆様におかれましては、シリアへの関心を持ち続け、報道を続けていただけるよう、切にお願いします。シリアでの紛争は決して過去の出来事ではなく、今この瞬間もシリア内外で苦しむ人々がいることを、私たちは忘れてはなりません。和平の実現のために、一人でも多くの方がシリアの人々の今を知り、声をあげ、行動することが今まさに求められています。すべての人たちの努力で、シリアに和平がもたらされることを切に願います。私たちはそのために声を上げ続けます。以上この声明に関する連絡先特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)〒110-8605 東京都台東区上野5-3-4 クリエイティブOne秋葉原ビル6FTEL:03-3834-2388 / FAX:03-3835-0519 / E-mail:info@ngo-jvc.net広報担当 並木

[2018.5.15]シリア和平ネットワークの代表が外務省中東一課を訪問し、最近のシリア情勢について協議しました。

5月15日、シリア支援団体サダーカ事務局長の森野謙さん、同アドボカシーグループの大竹菜緒さんと小泉尊聖さん、そして日本国際ボランティアセンター(JVC)の並木麻衣さん、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)の斎藤亮平さんがシリア和平ネットワーク代表として外務省中東一課の服部高士課長補佐と團杏奈事務官を訪問し、シリア問題について次のように意見交換を行いました。先方の主な発言内容は;1.国際シンポジウム3月24日に明治学院大で開催されたシリア和平ネットワーク主催の「シリア人の声をつなぐ-危機発生から七年、私達に求められる役割」シンポジウムは外務省にはできない事であり、こうした市民社会のアプローチを外務省は歓迎します。2.4月14日の米英仏軍によるシリアへの軍事攻撃について先ずシリア和平ネットワークより、JVCが発出した声明について説明しました。本攻撃は安保理決議に拠らず、且つ自衛のための戦争とは云えない明らかな国際法違反であり、そうした軍事攻撃に理解を示す日本政府の方針は誤りである旨指摘しました。その上で化学兵器使用の有無の徹底した調査と政治的解決を日本外交は推進すべきである旨提言しました。外務省側は、昨年の化学兵器使用疑惑時の米軍によるミサイル攻撃と同様に「米英仏3カ国の決意を支持する」と表現したのは、米英仏の軍事攻撃はシリア政府の化学兵器能力を減ずるためで、その攻撃による死者は発生しなかった、また日本政府は東グータでの化学兵器使用疑惑のみならず、これまでのシリア政府の化学兵器との関わり方を考慮して今回の判断に至ったと主張しました。東グータで化学兵器が実際に使われたかは、化学兵器禁止機関(OPCW)にて現在作業中で、調査結果が出るのに2~3週間はかかる見込みです。4月のカナダG7外相会議で河野外務大臣は、化学兵器使用者を特定できるメカニズムを早急に設立すべきと発言しました。これに対し当ネットワークは、当時は化学兵器が使われたかどうか、また誰が使用したかが分からない状況であり、かつシリアがOPCWの調査を受け入れていたことを踏まえれば、軍事攻撃ではない他の方法もあり得た筈と指摘すると共に、日本政府のリードで化学兵器使用者の特定メカニズムが設立されることに期待を寄せました。3.4月から5月にかけて発表された日本政府のシリア危機に関する支援5月の中東訪問の際に安倍総理はヨルダンとレバノンのシリア難民支援のために世銀のグローバル譲許的資金ファシリティ(GCFF)に1000万ドルを拠出する旨発表しました。同時にヨルダン向けに400万ドルの無償資金が用意されることも明らかにされており、国連機関を通じた人道支援の用途で使われる予定です。これは4月にブリュッセルで開催されたシリア支援国会合で河野外相が発表した1400万ドルにのぼる「シリア危機の影響を受ける中東三か国に対する緊急無償資金協力」の一部です。これら以外にも、シリア人の間の信頼醸成と和解を目指し外務省とシリア和平ネットワークが協働する可能性や学習会の実施、クルド人問題への取組の必要性などについても話し合いました。武力でシリアの平和は実現できない、対話や融和プロセスが不可欠であることも確認し合いました。

[2018.3.28]Symposium “Delivering Voice of Syrians: 7 years now, what we should do”

      On March 24, 2018, the Network for Peace in Syria and Meiji Gakuin University's International Peace Research Institute jointly held a symposium entitled “Delivering The Voices of Syrians: Seven Years On, What We Should Do” at Meiji Gakuin's University campus.      Originally the Syrian crisis began as movement for democratization. However Syria has transformed into a battle ground as foreign countries struggle over their national interests, which has left behind Syrians who are suffering from the war. We organized this symposium in order to make international society listen to their voices and cries for peace in Syria.      The symposium's first speaker is an expert who provided his analysis of the current situation in Syria. Then two Meiji Gakuin University alumnae introduced the voices of their friends who were their host families in East Gouta in 2008. They are currently in the besieged area, facing bombing and hunger. Finally a Syrian lady expressed her thoughts on her country as Syrian. Her home town is located in the frontline of the war.      Prof. Aoyama of Tokyo University of Foreign Studies highlighted the fact that Syria is now a battlefield of foreign countries who focus on their respective national interests, and are no longer paying attention to important issues on the Syrian agenda such as democracy and sovereignty. Trump`s US government has less interest on Syria, which allows the influence of Russia, Turkey and Iran to pervade Syria. Today “Terrorism” in Syria is defined by these three countries. To put the matter in bluntly, those factions who follow them are "legitimate," those who oppose them are branded "terrorists."       Ms. Nakano, Meiji Gakuin University alumna, spoke about her fond memories with an Arab family who welcomed her in East Gouta in 2008, regardless of the fact that she is Christian. And she also commented on the contents of her communications with them since 2011. They asked for help, and they said that they were bombed even though they weren`t terrorists. They asked her to deliver their messages to many others. (Ms.Nakano had lost contact with them a few days before the symposium. Luckily just after her presentation on the podium, she received a message from them that they were OK now.)      Ms. Altaweel explained how people live under the war with her own experience. Those who have survived until now are thought to be lucky, but in reality the last seven years have had hardships that is beyond the imagination of a normal human being: Security threats. Deprivation. Unable to see loved ones. The sense that compassion should be a universal human value.       She mentioned the following as what we can do;   Continuous advocacy for peace and inclusion.   Support for education, especially as a tool to combat radicalization.   Support for the daily life survival of families and children affected by war   Support for health services as the cost is very high compared of other life-sustaining needs       The symposium adjourned after a very active Q&A session. The participants expressed their appreciation commenting, “I heard the real Syrian voice”, “Now I can fathom what Syrians want to communicate”, “This symposium motivated me to think about what we should do for Syria” etc. We, members of Network for Peace in Syria will keep trying to contribute to Syrian peace by listening to Syrians and delivering their messages to others.

ラウィアさん発表要旨

8年目のシリアシリア人としての思いアルタウィル・ラウィア戦争の中の暮らし 紛争のコラテラル・ダメージ(二次的損害)として、市民は子どもであろうが女性であろうが、殺され、負傷させられ、拘束され、拷問されている。 7年の戦争を生き延びた私達はラッキーと思われるが、その間の苦しみは一般的な人間の想像を超えたものであり、感情的・心理的なストレスは誰しもに影響を与えている。戦地の日常 毎日危険にさらされる命。 断水・停電・燃料の欠乏に煩わされる日々の暮らし。 公共サービスが欠如し、医療も教育も戸籍などの役所仕事さえ止まっている。 今自分のいる場所で家族や友人に会えない。私達は何かしないといけないのだろうか 2018年の世界で、こんなことが起こっていることに納得できない。 隣人の苦しみに思いを寄せる気持ちは誰もが持つもの。 子ども達になんと伝えればいいのだろう。 ささいなことが大切。私達にできること 平和のために、そして誰もが取り残されないようにするために声をあげ続けること。 教育へのサポート、とくに人々が極端に走らないようにするための教育支援。 紛争の影響を受けている家族や子ども達が生き延びるための支援。 他の命を長らえるためのニーズと比べてコストが高い保健サービスへの支援。

明治学院大学OBの中野愛さんの発表内容

7年にわたるシリアでの紛争に心を痛めています。私は学生時代、明治学院大学国際学部のゼミナールの校外学習で、シリアの東グータにある村に行き、ホームステイをしました。その村は緑が豊かなところで、親切な人たちが住んでいました。東グータに住み、平和を望んでいる一村民の様子をお伝えしたいと思います。まずは私がホームステイをした2008年、戦前の様子をご紹介します。緑が多く、オリーブ、あんず、ズッキーニなど、たくさんの種類の植物が植わっているのどかな農村でした。住民はイスラム教徒で、村の中にはいくつかのモスクがありました。まだ日の昇らない早朝、モスクから大音量の呼びかけが聞こえてきます。それを聞いて人々は起き上がり、お祈りをします。イスラム教の戒律によりお酒が飲めない人が、飲み会ではなく道端でお茶会をしている姿も度々見かけました。私がホームステイした先のアラブ人一家は、その日出会った見ず知らずの私を快く泊めてくれました。その村では、だいたいどの家庭も、このような大きなお盆に載ったおかずや大きなパンをみんなでちぎってシェアしながら食べるようです。アラビア語が話せない私に彼らは、身振り手振りで懸命に話しかけてくれました。生活の一部をお見せします。女性は食事の支度や洗濯などの家事をし、男性は家畜の世話や畑仕事などをしています。一家と打ち解けてきたころ、私は彼らに、自分がクリスチャンであることを話しました。驚いた様子でしたが、その後も変わらず仲良くしてくれました。村を出る前日、一緒に、おり紙をおりました。一家の主は舟をおってこう言いました。「これは平和の舟だよ。日本まで平和で無事に帰れるようにね。」そして舟に平和と書き、私にプレゼントしてくれました。親切で、平和を願う温かい人たちだと感じました。けれども2011年、紛争が始まりました。報道を聞いて心配になり、時折電話で連絡をとり、安否を確認しました。「無事ですか。」ときくと、いつも決まって「家族は無事だよ。村もみんな無事です。」と返事が返ってきていました。2017年に入ってから、実際の状況を伝えてくれるようになりました。2018年1月20日のメッセージはこうでした。「息の詰まるような包囲の中にいます。水も電気もなく、激しい貧困状態にあります。」1月25日には、「助けてくれませんか。」とメールがきました。3月5日のメールにはこう書かれていました。「二カ月前からグータは、テロリストたちがいるという口実のもと、空爆を受けています。しかし、この話は真実ではありません。私たちは非武装の国民であり平和を望んでいます。政府とロシアはグータはテロリストがいる場所だと言っていますが、ここにテロはありません。2500人以上の人が殺され、負傷者も障害を負った者もいます。殺されたのは全て、女性や子どもと民間人です。現在の瞬間も、ミサイルや樽爆弾による空爆、あらゆる種類の武器によって破壊され、国際的に禁じられている毒ガスも使われています。40万人以上の人が包囲され、飢餓や水、通信、電気、治療不足の状況に追い詰められています。日本政府には、民間人が受けている封鎖や飢え、樽爆弾による空爆がもたらす苦しみから救ってくれるように最大限尽くすことを願っています。また、日本国民には、東グータの人たちとともに立ち上がるために国連安全保障理事会に書簡を出してほしいと願っています。グータを救ってください。」3月7日のメールにはこう書かれていました,「東グータ内の安全なところに逃げました。地下の避難所にいます。ここには、土地も工場も、学校も、完全に破壊されてありません。友よ、私は今、全能の神が私をこの空爆の苦しみから救ってくれるのを待っているのです。この瞬間にも、飛行機が爆撃している。私の友人を、何かを。私の故郷は全部破壊されてしまった。私ちちは動物さえも生きていない生活を生きているのです。ここでは飢え、恐れ、住宅の破壊が起きています。」紛争が始まって数年後、その村人の家族は村を出ましたが彼は村に残ったようです。過酷な状況になってもなお残り続けた大事な故郷であるその家を離れなければならないほど、その村は危険な状態になってしまったことがわかりました。避難先もその村と比較すれば安全だとはいっても、東グータ内であり、飢え、恐れ、空爆による破壊が起きていて、動物さえも生きていけない生活を生きているというのは、極限状態にあることがわかります。3月13日のメールには、こうありました。「安全なところに住んでいるとはいっても、私たちは何もすることができません。残念ながらどんな支援物資もありません。連続する空爆が原因で、ここには何も届いていないからです。私たちは、私たちの家から持ってきた食料で暮らしています。でもこれは数日分しかありません。」13日のこのメールを最後に、連絡が取れなくなってしまいました。すでに極度の貧困下にあった村からもってきた数日分の食料は、今日にはもう尽きてしまったのではないかと思います。ずっと平和を願ってきた無防備な村人が、このような苦しみの中にあるというのが現状です。最後のメールの末尾に書かれていたメッセージを紹介して、この発表を閉じたいと思います。「私はあなたが多くの人たちに、この言葉を伝えてくれることを願っています。そして、全てが真実であると皆さんに伝えてください。あなたが私たちとともに協力してくれることに感謝します。私はあなたに感謝します。あなたは東グータの家族の声や叫びを届けてくれる人だからです。」聞いていただいた皆さんには、世論として、東グータの人々の安全を確保するための働きかけをする力になっていただければと思います。東グータの村民に代わり、お願いします。皆さんが私たちとともに協力してくれることに感謝します。

[2018.3.24]シンポジウム 全体報告

シリア和平ネットワークは2018年3月24日、明治学院大学国際平和研究所との共催のもとに「『シリア人の声をつなぐ』-危機発生から7年、私達に求められる役割-」を同大学白金校舎(東京)にて開催しました。シリアの民主化を求める運動として始まったはずが、いつしか大国や周辺国のむき出しになった国益を巡る争いの場にかわってしまったシリアで置き去りにされている受苦者の声。私達はシリアの平和を願うものとして、現地から聞こえてくる切実な思いや叫びを国際社会に訴えるべく、本シンポジウムを企画しました。2018年現在のシリア情勢について専門家から説明を伺った上で、紛争発生以前から東グータの人々と家族のような交流を続けてきた明治学院大卒業生に、包囲作戦による飢餓や空爆に苦しむ現地の友人の声を届けてもらいました。最後にシリア人としての思いをシリア政府軍と反政府武装勢力の衝突の前線に故郷をもつシリア人女性に語っていただきました。東京外大の青山弘之教授は民主化や主権といったシリア内戦の争点が意味をなさなくなり、国益をむき出しにして争い合う諸外国の主戦場としてのシリアに陥っていることを浮き彫りにしました。トランプ政権の関与の低下。ロシア・トルコ・イラクの結託により決められてしまう「テロ」の定義。端的に云えばそれらの三カ国の意に沿う行為であれば「合法」。そうでなければ「テロ」となります。明治学院大OBの中野愛さんは2008年にクリスチャンである自分を温かく受け入れてくれた東グータのアラブ人家族との交流の思い出を語りました。そして紛争発生後の現地から聞こえてくる助けを求める切実な声と、「私達はテロリストでないのに空爆されている」との訴え、そうした思いを多くの人々に伝えてほしいとの願いも。(シンポジウムの数日前から中野さんの東グータの友人の消息は不明だったのですが、中野さんの発表数時間後にその方から無事を知らせる連絡が届いたそうです。)アルタウィル・ラウィアさんは戦争状態のシリアの日常を自らの経験をもとに語りました。生き延びたからと云って決して幸運とは言えない暮し。危険に晒される命。不自由な生活。愛する人々に会えない毎日。Compassion is universal human value(隣人の苦しみに思いを寄せる良心は誰にでもある。)ラウィアさんは次の四点を私達がすべきこととして挙げました:・平和のために、誰もが取り残されないようにするために声をあげ続ける。・教育へのサポート、人々が極端に走らないようにするための教育支援。・紛争の影響を受けている家族や子ども達が生き延びるための支援。・他の命を長らえるためのニーズと比べてコストが高い保健サービスへの支援。その後全体での質疑応答がなされました。参加者からは「シリア人の本当の声が聞けた」、「シリア人が何を伝えてほしいかわかった」、「具体的に何ができるか考えさせられた」との感想を頂きました。シリア和平ネットワークはこれからも平和を求めるシリア人の声をつないでいくことで、非暴力によるシリアの平和に貢献していきたいと願っています。登壇者の発表内容等を次の記事において紹介します。・明治学院大OBの中野さんの発表内容・ラウィアさんの発表要旨